期待値
期待値 (expected value) とは、確率変数全ての値に確率の重みをつけた加重算術平均のこと。
E(X(ω))=∫ΩX(ω) dPr(ω)(ω∈Ω)
離散型確率変数の期待値:
確率変数 X が離散型であるとき、X の期待値 E(X) は、
E(X)=x∑xP(X=x)
連続型確率変数の期待値:
確率変数 X が連続型であるとき、X の期待値 E(X) は、
E(X)=∫−∞∞xp(x) dx
期待値の諸定理
(E1):E(X+a)=E(X)+a
(E1) の導出:
E(X+a) は、確率変数 X の値に定数 a を加えることを表す。
X が離散確率変数の場合:
E(X+a)∴E(X+a)=x∑(x+a)P(x)=x∑xP(x)+x∑aP(x)=x∑xP(x)+ax∑P(x)=E(X)+a=E(X)+a
X が連続確率変数の場合:
E(X+a)∴E(X+a)=∫(x+a)p(x) dx=∫xp(x) dx+∫ap(x) dx=∫xp(x) dx+a∫p(x) dx=E(X)+a=E(X)+a
期待値の線型性
線型性に必要な以下二つの性質を満たすため、期待値は線型性を持つ。
加法性斉一次性:E(X+Y)=E(X)+E(Y):E(aX)=aE(X)
期待値の加法性の証明:
E(X+Y) は確率変数 X,Y の和の期待値を表し、個々の確率変数の値 x,y の生起する確率は x,y の同時確率となるため、
X,Y が離散確率変数の場合:
E(X+Y)∴E(X+Y)=x∑y∑(x+y)P(x,y)=x∑y∑xP(x,y)+x∑y∑yP(x,y)=x∑y∑xP(x∣y)P(y)+x∑y∑yP(y∣x)P(x)=x∑xP(x)+y∑yP(y)∵全確率の法則により=E(X)+E(Y)=E(X)+E(Y)
X,Y が連続確率変数の場合:
E(X+Y)∴E(X+Y)=∬(x+y)p(x,y) dxdy=∬xp(x,y) dxdy+∬yp(x,y) dxdy=∬xp(x∣y)p(y) dxdy+∬yp(y∣x)p(x) dxdy=∫xp(x) dx+∫yp(y) dy∵全確率の法則により=E(X)+E(Y)=E(X)+E(Y)
期待値の斉一次性の証明:
E[aX] は、確率変数 X の値に定数 a を掛けることを意味する。
X が離散確率変数の場合:
E(aX)∴E(aX)=x∑axP(x)=ax∑xP(x)=aE(X)=aE(X)
X が連続確率変数の場合:
E(aX)∴E(aX)=∫axp(x) dx=a∫xp(x) dx=aE(X)=aE(X)
積の期待値と期待値の積
二つの確率変数 X,Y に対して、X,Y が無相関であるとき、次式が成り立つ。独立であることは無相関でもあるので、X,Y が独立である場合も成り立つ。
E(XY)=E(X)E(Y)(cov(X,Y)=0)
無相関のとき積の期待値と期待値の積が等しいことを証明:
共分散の諸定理より、
cov(X,Y)∴E(XY)=E(XY)−E(X)E(Y)=0=E(X)E(Y)
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参考文献
稲井 寛
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