確率空間とは
可測空間 (Ω,F) に確率測度 P を加えた測度空間 (Ω,F,P) のことを、確率空間 (英:probability space) という。
確率測度
確率測度 (英:probability measure) とは、可測空間 (Ω,F) において Pr(Ω)=1 を満たす完全加法な測度のこと。確率論では単に確率 (英:probability) と呼ばれる。各事象の確率測度が等分であることを求めてはいない点に注意。
(P1)(P2)(P3)(P4):Pr(∅)=0:A⊆B⇒Pr(A)≤Pr(B):Pr(i∈N⋃Ai)=i∈N∑Pr(Ai)(i=j⇒(Ai∩Aj=∅)):Pr(Ω)=1
また (PA1),(PA2),(PA3),(PA4) は確率の公理 (英:probability axioms) とも呼ばれる。
試行
試行 (英:trial) とは、同じ条件の下で繰り返し行うことができ、その結果が偶然に支配される実験・計測・観測といった行為のこと。
標本空間
標本空間 (英:sample space) とは、確率空間の空間 Ω であり、試行により生起しうる結果の集合のこと。標本空間の元を標本点 (英:sample point) と呼ぶ。標本はしばしば ω で表される。
ω∈Ω
事象
事象 (英:event) とは、標本空間の任意の部分集合 E⊆Ω のこと。空集合と等しい事象を空事象 (英:impossible event) 、標本を一つのみ含む事象を根元事象 (英:elementary event)、標本を二つ以上含む事象を複合事象 (英:compound event)、標本空間と等しい事象を全事象 (英:certain event)と呼ぶ。
E∈F⊆P(Ω)
例えば表を 1、裏を 0 とした場合、コインを一回投げた際の標本空間は、
Ω={0,1}
となる。Ω の事象を全て並べると、
{0,1},{0},{1},ϕ{0,1}{0},{1}ϕ:複合事象,全事象:根元事象:空事象
また、コインを二回投げた際の標本空間は、
Ω={(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)}
その結果の事象は、
{(0,1)},{(1,0)},{(1,1)}
和事象
和事象 (英:union of events) とは、一つ以上の事象の合併集合のこと。A と B の少なくとも一方が起こる事象を指す。
A∪B(A,B∈F)
積事象
積事象 (英:intersection of events) とは、一つ以上の事象の共通部分のこと。A と B が同時に起こる事象を指す。
A∩B(A,B∈F)
余事象
余事象 (英:complementary event) とは、事象の補集合のこと。事象と余事象の和事象は全事象である。A が起こらない事象を指す。
Ac=Ω∖A(Ω,A∈F)
排反事象
排反事象 (英:disjoint events) とは、和事象が空事象となる事象のこと。A と B のどちらか一方のみが起こる事象を指す。
A∩B=∅(A,B,∅∈F)
確率の加法定理
事象 A,B が排反事象であるとき、確率測度の定義から次式が成り立つ。これを確率の加法定理 (英:addition theorem on probability)という。
Pr(A⊔B)=Pr(A)+Pr(B)
独立性
二つの事象の共通部分の確率測度の値が、それぞれの事象の確率測度の値の積と等しい場合、その二つの事象は独立 (英:independent) であるという。
Pr(i=1⋂nAi)=i=1∏nPr(Ai)(Ai∈F)
また確率変数の値に伴う独立性についても、事象が独立であることを前提とすれば、
Pr(X>m,X>n)∴Pr(X>m,X>n)=i=1∑mj=1∑nPr(Ai∩Aj)(Ai,Aj∈F)=i=1∑mj=1∑nPr(Ai)Pr(Aj)=i=1∑mPr(Ai)j=1∑nPr(Aj)=Pr(X>m)Pr(X>n)=Pr(X>m)Pr(X>n)
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参考文献
稲井 寛
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