ノルム空間
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ノルム空間とは
ノルム空間 (normed space) とは、ノルム (英:norm) が定義されたベクトル空間のこと。ノルム $\Vert\bullet\Vert$ とはベクトルの「大きさ」の概念を一般化したものであり、以下の性質を満たす実数値関数のこと。ノルム空間は $(V,\Vert\bullet\Vert)$ で表される。
\[ \def\v #1{\boldsymbol #1} \begin{aligned} \text{(N1)} &: \Vert\v x\Vert\ge 0\land\big(\Vert\v x\Vert = 0\lrArr\v x=\v 0)\big) \cr \text{(N2)} &: \Vert a\v x\Vert = |a|\Vert\v x\Vert \cr \text{(N3)} &: \Vert\v x+\v y\Vert\le\Vert\v x\Vert + \Vert\v y\Vert \end{aligned} \]
- $\text{(N1)}$ :非負性
任意のベクトル $\boldsymbol x\in V$ のノルムの値は $0$ より大きく、ノルムの値が $0$ であるベクトルは零ベクトルに限る。 - $\text{(N2)}$ :線型性
ノルムは線型写像の性質を持つ。 - $\text{(N3)}$ :三角不等式
二つのベクトル $\boldsymbol{x},\boldsymbol{y}$ の和のノルムは、それぞれのベクトルのノルムの和以下である。
ノルム空間と距離
ノルムの定義を用い、次式のように距離を定義することでノルム空間は距離空間の構造を持つ。
\[ \def\b{\boldsymbol} d(\b{x},\b{y}) = \Vert\b{x}-\b{y}\Vert \]
ノルム空間が距離空間であることの証明:
- 正値性:$\text{(N1)}$ により自明
- 非退化性:$\text{(N1)}$ により自明
- 対称性:ベクトル空間が加法において可換であることから、ノルムによる距離の定義により対称性を満たす
- 三角不等式:$\text{(N3)}$ により自明
p-ノルム
有限次元ベクトルにおいて、次式で定義されるノルムを p-ノルムという。
\[ \Vert\boldsymbol{x}\Vert_p := \left(\sum_{i=1}^n\vert x_i\vert^p\right)^{1/p} \]
単位ベクトル
単位ベクトル (英:unit vector) とはノルムが $1$ であるベクトルのこと。あるベクトル $\boldsymbol x$ を p-ノルムが $1$ の同じ向きのベクトル $\boldsymbol e$ に変換することを正規化 (英:normalization) という。
\[ \boldsymbol e_p = \frac{\boldsymbol x}{\Vert\boldsymbol x\Vert_p} \]