自然数とは
自然数 (英:natural number) とは、個数や順番を表す数学的対象のこと。ペアノの公理により定義され、以下の数学的構造を持つ。
自然数全体の集合は N で表されるが、0 を含むか否かは読み手や文脈に委ねられる。明示的に表す場合は、次式のような表記を用いる。
N>0:={1,2,…}N≥0:={0,1,…}
ペアノの公理
ペアノの公理 (Peano axioms) とは、自然数の概念を公理化したもの。
(PA1)(PA2)(PA3)(PA4)(PA5):∃0∈N:∀a(a∈N⇒suc(a)∈N):∄a(suc(a)=0):∀a,b(a=b⇒suc(a)=suc(b)):∀A(A⊆N, 0∈A, (a∈A⇒suc(a)∈A)⇒A=N)
- (PA1) :自然数 0 が存在する。
- (PA2) :全ての自然数の後者 (successor) は自然数である。
- (PA3) :0 を後者とする自然数は存在しない。
- (PA4) :二つの自然数が等しいならば、それらの後者も等しい。
- (PA5) :自然数の部分集合が 0 を含み、後者の性質を満たすならば、その部分集合は自然数全体をなす。
集合論を用いたペアノの公理を満たす自然数の構成は諸説存在する。次式にジョン・フォン・ノイマン (英:John von Neumann) の定義を記す。
suc(a)012a:=a∪{a}:=∅={}:=suc(0)=0∪{0}={{}}:=suc(1)=1∪{1}={{},{{}}}⋮:=suca(0)
自然数の順序
二つの自然数の順序関係 ≼ 及び大小関係 ≤ は次式のように定義される。
a≤b:=a≼b:=a⊆b
自然数の加法
自然数の加法は再帰的に次式のように定義できる。
a+0a+suc(b)=a=suc(a+b)
次表は、自然数の加法が再帰的に定義できる様子を表したものである。次表から自然数全体に対して加法が定義できることが確認できる。
a+ba\b012⋮00+0=01+0=12+0=2⋮10+1=0+suc(0)=suc(0+0)=11+1=1+suc(0)=suc(1+0)=22+1=2+suc(0)=suc(2+0)=3⋮20+2=0+suc(1)=suc(0+1)=21+2=1+suc(1)=suc(1+1)=32+2=2+suc(1)=suc(2+1)=4⋮⋯⋯⋯⋯⋱
また自然数の加法は、下記の代数的構造を持つため可換モノイドである。
(NA1)(NA2)(NA3):(a+b)+c=a+(b+c):a+0=0+a=a:a+b=b+a
- (NA1) :加法の結合律
- (NA2) :加法の単位律
- (NA3) :加法の可換律
(NA3) の証明:
a+b=a+suc(b′)=suc(a+b′)⋮=sucb(a+0)=sucb(a)(1)
(1) より、
a+bb+a∵sucb(suca(0))∴a+b=sucb(a)=sucb(suca(0))=suca(b)=suca(sucb(0))=suca(sucb(0))=b+a
(NA2) の証明:
加法の定義と、(NA3) により、
∴a+0=0+a=a
(NA1) の証明:
(NA2),(NA3) から、
(a+b)+ca+(b+c)∵succ(sucb(suca(0)))∴(a+b)+c=sucb(suca(0))+c=succ(sucb(suca(0)))=a+succ(sucb(0))=succ(sucb(0))+a=suca(succ(sucb(0)))=suca(succ(sucb(0)))=a+(b+c)
自然数の乗法
自然数の乗法は再帰的に次式のように定義できる。
a⋅0a⋅suc(b)=0=(a⋅b)+a
次表は、自然数の乗法が再帰的に定義できる様子を表したものである。次表から自然数全体に対して乗法が定義できることが確認できる。
a⋅ba\b012⋮00⋅0=01⋅0=02⋅0=0⋮10⋅1=0⋅suc(0)=(0⋅0)+0=01⋅1=1⋅suc(0)=(1⋅0)+1=12⋅1=2⋅suc(0)=(2⋅0)+2=2⋮20⋅2=0⋅suc(1)=(0⋅1)+0=01⋅2=1⋅suc(1)=(1⋅1)+1=22⋅2=2⋅suc(1)=(2⋅1)+2=4⋮⋯⋯⋯⋯⋱
また自然数の乗法は、下記の代数的構造を持つため可換モノイドである。
(NM1)(NM2)(NM3):(a⋅b)⋅c=a⋅(b⋅c):a⋅1=1⋅a=a:a⋅b=b⋅a
- (NM1) :乗法の結合律
- (NM2) :乗法の単位律
- (NM3) :乗法の可換律
(NM3) の証明:
a⋅b=a⋅suc(b′)=(a+b′)+a⋮=b timesa+⋯+a=b timessuca(0)+⋯+suca(0)=b timessuca(suca(⋯(0)⋯))=sucab(0)(1)
(1) より、
a⋅bb⋅asucab(0)∴a⋅b=sucab(0)=sucba(0)=sucba(0)=b⋅a
(NA2) の証明:
乗法の定義と、(NA3) により、
a⋅11⋅a∴a⋅1=a⋅suc(0)=(a⋅0)+a=a=a⋅1=a=1⋅a=a
(NA1) の証明:
(NA2),(NA3) から、
(a⋅b)⋅ca⋅(b⋅c)∵sucabc(0)∴(a⋅b)⋅c=sucab(0)⋅c=sucabc(0)=a⋅sucbc(0)=sucbc(0)⋅a=sucbca(0)=sucbca(0)=a⋅(b⋅c)
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